ターゲティングとは
ターゲティングとは、マーケティング戦略の核となるプロセスの一つで、自社の製品やサービスを最も必要としている、あるいは購入する可能性が高い特定の顧客層(ターゲット顧客)を明確に定めることです。市場全体を性別、年齢、地域、興味関心などの要素で細分化し、その中から最も効率良くアプローチすべき層を選び出します。Web広告運用においては、広告を配信するユーザーを絞り込むための設定として非常に重要です。正確なターゲティングが、広告予算の無駄をなくし、コンバージョン率(CVR)の向上に直結します。
ターゲティング戦略は広告の費用対効果を決める生命線
デジタルマーケティングにおいて、ターゲティングは広告予算の使い道を決定づける生命線です。広告は、どれだけ優れたクリエイティブやコピーを用意しても、それを間違った相手に届けてしまえば、費用だけがかさんで成果は出ません。
例えば、BtoCの高級腕時計を販売する場合、20代の学生よりも、40代以上の高所得層の男性に絞り込んで広告を配信した方が、購入につながる可能性は圧倒的に高くなります。リスティング広告であれば、検索キーワードという「ニーズ」でターゲティングできますが、SNS広告やディスプレイ広告では、ユーザーの「属性」や「興味関心」といったデータを使って絞り込みます。
BtoBビジネスにおいても、ベンチャー企業向けのSaaSサービスであれば、「従業員数50名未満」かつ「IT業界の経営層」といった具合に、明確なデモグラフィック(人口統計学的属性)とファームグラフィック(企業属性)でターゲティングを絞り込む必要があります。この絞り込みの精度を高めることが、顧客獲得単価(CPA)の改善に直接的に貢献します。
潜在顧客から見込み顧客へ導くデジタルターゲティングの種類
デジタル広告におけるターゲティングの手法は多様化しています。大きく分けて、潜在層にアプローチする手法と、すでに接点のある見込み客にアプローチする手法があります。
デモグラフィック・サイコグラフィックターゲティング
年齢、性別、居住地(デモグラフィック)や、趣味、関心、ライフスタイル(サイコグラフィック)に基づき、潜在顧客層を絞り込みます。SNS広告で特に有効です。
リターゲティング(リマーケティング)
過去に自社のWebサイトを訪問したが、コンバージョン(CV)に至らなかったユーザーに対し、再度広告を表示する手法です。購買意欲が高い見込み客に絞り込めるため、CVRが高い傾向にあります。
類似オーディエンスターゲティング
既存の優良顧客や、WebサイトでCVした顧客と行動パターンが似ている新規ユーザーを探し出し、広告を配信する手法です。獲得効率の良い層を拡大する際に使われます。
これらの手法を組み合わせることで、認知段階から検討段階に至るまでのカスタマージャーニー全体を通じて、適切なタイミングで広告を届けることができるようになります。
LPOとABテストがターゲティング効果を最大化する
ターゲティングが「誰に広告を見せるか」を決める施策であるのに対し、LPO(ランディングページ最適化)は、「見せた広告で獲得したユーザーをどうコンバージョンさせるか」を決める施策です。この二つはセットで考える必要があります。
どんなに正確にターゲティングを行っても、広告をクリックして流入したランディングページ(LP)の内容が、ターゲティングされたユーザーの関心やニーズに合致していなければ、すぐに離脱してしまいます。
ここでLPOが重要になります。ターゲティングごとにLPの内容をパーソナライズするのです。例えば、「リターゲティングで再訪問したユーザー」には、「限定特典」を強調したLPを出し、「新規の類似オーディエンス」には「製品の具体的なメリット」を強調したLPを出し分ける、といった戦略です。
この出し分けの効果を検証するために、ABテストが不可欠です。ターゲティングのセグメントごとに、どのLPのコピーやオファーが最も高いCVRを生むかをABテストで科学的に検証することで、ターゲティング施策の真の費用対効果を最大化できます。
Q&A
Q1. リスティング広告とSNS広告では、ターゲティングの方法は異なりますか?
大きく異なります。リスティング広告は、ユーザーが検索した「キーワード」という顕在的なニーズに基づくターゲティングが中心です。一方、SNS広告は、ユーザーの「プロフィール情報」「興味関心」「行動履歴」などの属性データに基づくターゲティングが中心となります。
Q2. ターゲティングを絞り込みすぎると、どのようなデメリットがありますか?
ターゲティングを絞り込みすぎると、広告の配信ボリュームが極端に少なくなり、機会損失が発生します。また、広告プラットフォームのAIが学習するためのデータ量(特にCV数)が不足し、最適化が進まなくなる可能性があります。
Q3. ターゲティングの精度を上げるために、データ活用はどのように行われますか?
自社の顧客データ(CRMデータ)やWebサイトのアクセス解析データなどを広告プラットフォームに連携し、これを基に優良顧客と類似するユーザーを探す「カスタムオーディエンス」や「類似オーディエンス」といった高度なターゲティングに利用されます。
Q4. LPOはターゲティングの成果にどう影響しますか?
LPOは、ターゲティングによって集めたユーザーをコンバージョン(CV)へ導く役割を担います。ターゲティングのセグメントごとに、LPの内容やオファーを最適化(LPO)することで、CVRが向上し、結果としてターゲティング施策全体の費用対効果が改善します。
Q5. BtoBのターゲティングで最も重要な要素は何ですか?
BtoBでは、個人の属性よりも、企業の「業種」「企業規模(従業員数)」「役職(意思決定者)」といった企業属性(ファームグラフィック)が最も重要になります。これは、BtoBの購買プロセスが個人ではなく組織の意思決定に基づくためです。
関連用語
コンバージョン率(CVR)