STP分析

    STP分析とは

    STP分析は、マーケティング戦略を立案する際に、「どの市場で」「誰に」「どのような価値を」提供するかを明確にするためのフレームワークです。これは、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)という3つの頭文字から名付けられています。

    市場全体を細分化し、狙うべき顧客層を定め、競合との差別化を明確にする、という一連の流れを通じて、自社の限られたリソースを最も効果的に投入できる場所を見つけ出すことが目的です。この分析を行うことで、製品やサービスのターゲット像がブレなくなり、結果として、より響くメッセージや広告戦略を構築できる基礎が固まるでしょう。

    セグメンテーショ-市場の細分化

    STP分析の最初のステップであるセグメンテーションは、巨大で多様な市場を、似たニーズや特性を持つ顧客グループに切り分ける作業を指します。市場を地理的、人口統計的(年齢・性別・職業など)、心理的(ライフスタイル・価値観など)、行動的(購買頻度・利用用途など)な変数で細かく分けることで、「すべての顧客」ではなく「特定の顧客層」に焦点を当てる準備が整います。

    例えば、BtoCの食品メーカーが、大ざっぱに「健康志向の消費者」と捉えるのではなく、「40代の働く女性で、食事にかける時間を短縮したいが、無添加の食品を求める層」といった具体的なグループに分けることで、商品の開発やメッセージングの精度が格段に高まるでしょう。大手企業もベンチャー企業も、この細分化によって、自社の強みが活きる「ニッチな市場」を見つけ出すことが可能になります。

    ターゲティング-狙うべき顧客を定める

    セグメンテーションで市場を細かく分けたら、次にターゲティングによって、自社が最も収益を上げやすく、かつ持続的にアプローチできる顧客セグメントを選びます。これは、「誰のためにビジネスをするのか」を決める、戦略上最も重要な意思決定の一つです。

    例えば、BtoBのITソリューション企業が、細分化された市場の中から、「従業員数50名未満の中小企業」かつ「DX推進に積極的な企業」という明確なターゲットを選定することで、営業リソースを集中させることができます。ターゲットが明確になることで、その顧客層が抱える課題やペインポイントが鮮明になり、提供すべきソリューションやサービスの機能も具体化するでしょう。ターゲット選定の精度が、その後のマーケティング活動全般の成功を左右すると言っても過言ではありません。

    ポジショニング-競合との優位性を確立

    STP分析の最後のステップであるポジショニングは、選定したターゲット市場の中で、自社の製品やサービスが競合に対してどのような優位性を持っているかを顧客の心の中に位置づける作業です。これは、顧客に対して「なぜ他の製品ではなく、うちのサービスを選ぶべきなのか」という理由を明確に提示することに他なりません。

    例えば、競合が多いBtoCのファッションECサイトであれば、「価格の安さ」ではなく、「環境に配慮したサステナブルな素材を使用していること」を軸にポジショニングすることで、環境意識の高い若年層からの支持を集めることができます。また、BtoBの会計ソフトであれば、「機能の多さ」ではなく、「業界特化のサポート体制の手厚さ」を訴求軸にすることも有効です。

    競合との差別化ポイントを視覚的に整理するポジショニングマップといったツールを活用し、顧客にとって魅力的な「独自の立ち位置」を確立することが、長期的な競争力を生み出す鍵となります。

    Q&A

    Q1. STP分析はどのような場合に使うのが最も効果的ですか

    STP分析は、新しい製品やサービスを市場に投入する際や、既存の事業のマーケティング戦略を見直す際に最も効果を発揮します。また、事業環境が大きく変化したとき、例えば競合が新しいサービスを始めた場合や、顧客のニーズが多様化した際にも、自社の立ち位置を再確認するために非常に有用なツールとして活用されます。

    Q2. セグメンテーションで市場を細分化しすぎると、どんなデメリットがありますか

    市場を細かく分けすぎると、選定したターゲットセグメントの市場規模が小さくなりすぎてしまい、ビジネスとして十分な売上や利益を確保できなくなる可能性があります。また、細分化しすぎた各セグメントに合わせた個別のマーケティング施策を打つためのリソース(時間、予算、人員)が不足してしまうことも、実務上の大きなデメリットになります。

    Q3. ポジショニングを決める際に、競合がいないニッチな市場を選ぶべきですか

    必ずしも競合がいない市場を選ぶ必要はありません。競争がない市場は、単に魅力的な市場ではない可能性もあるからです。ポジショニングの目的は、競争のない場所を探すことではなく、競争のある市場の中でも自社が最も有利に戦える独自の価値を顧客に認識させることです。そのため、競合の存在をしっかり把握した上で、自社の強みを活かせる独自の軸を見つけることが大切になります。

    Q4. BtoBビジネスとBtoCビジネスでSTP分析のやり方に違いはありますか

    セグメンテーションの切り口に違いが出ます。BtoCでは、個人の年齢、性別、ライフスタイルなどが主な切り口になりますが、BtoBでは企業の規模、業種、所在地、経営課題、購買決定プロセスなどが重要なセグメントの軸となります。ターゲティングとポジショニングの考え方は共通していますが、分析の具体的なデータソースや切り口を変える必要があります。

    Q5. STP分析の結果は、Webサイトの改善にどう影響しますか

    STP分析でターゲット顧客が明確になると、その顧客に響くメッセージ、デザイン、コンテンツのトーン&マナーが決まります。これにより、Webサイトのトップページやランディングページで誰に何を伝えるべきかがブレなくなります。結果として、顧客の関心を引きつけ、コンバージョンへと導くための、一貫性のあるWebサイト改善の方向性が定まるでしょう。

    関連用語

    マーケティングミックス

    4P分析

    ペルソナ

    カスタマージャーニー

    SWOT分析

    KPI

    LPO

    ABテスト

    コンバージョン率

    市場細分化