SaaSとは
SaaS（サース）とは、Software as a Service（サービスとしてのソフトウェア）の略称です。これは、インターネット経由でソフトウェアを提供するサービス形態のことを指します。ユーザーはパッケージを購入して自分のパソコンにインストールするのではなく、Webブラウザや専用アプリを通じてサーバー上のソフトウェアを利用し、利用料を支払う「サブスクリプション（購読）」モデルが主流です。代表的な例として、GmailのようなWebメールや、Slackのようなビジネスチャットツール、クラウド型の会計ソフトなどが挙げられます。このモデルは、初期コストの低さや、どこからでもアクセスできる利便性から、BtoB、BtoC問わず急速に普及しました。
SaaSビジネスにおける「継続」の重要性
SaaSビジネスモデルの最大の特徴は、月額や年額の利用料で継続的に収益を得る点にあります。そのため、マーケティング戦略においても、新規顧客の獲得（CVRの向上）と同じくらい、既存顧客にいかに長く利用し続けてもらうか（LTVの最大化）が重要になります。
新規顧客を獲得するための広告費や営業コスト（CAC）は高くなりがちですが、顧客が契約を長く継続すれば、そのコストを回収し、大きな利益を生み出すことができます。特にBtoB向けのSaaSベンチャーが急速に成長するためには、高い顧客継続率が不可欠です。
大手企業が導入するCRMやMAツールのような高額なSaaSでも、利用されずに解約されてしまう「チャーンレート」の管理は、事業の命運を分けます。顧客が製品の価値を実感し、使いこなせるようになるための「カスタマーサクセス」や「オンボーディング」といった継続支援のプロセスこそが、このビジネスの根幹を成します。
顧客獲得コストを抑えるWebマーケティング戦略
SaaS企業は、営業担当者が個別に訪問して販売する従来のパッケージソフトと異なり、Webサイトを通じて効率的に顧客を獲得することを目指します。そのため、マーケティング戦略の焦点は、Webサイト上での体験を最適化し、購入やトライアル申し込みへと繋げることに置かれます。
リード（見込み客）を獲得するためのランディングページ（LP）や製品サイトは、SaaSビジネスの最前線です。BtoBのマーケターは、ターゲットとなる企業の課題を深く理解した上で、その課題を解決できることを明確に訴求する必要があります。製品の機能説明だけでなく、「無料トライアル」や「資料ダウンロード」といったコンバージョン（CV）への導線をわかりやすく設計することが不可欠です。
ここでLPOが非常に重要になります。LPのキャッチコピーやデザインをアクセス解析データに基づいて改善し、CVRを高めることが、広告運用の効率化、つまりCAC（顧客獲得コスト）の抑制に直結します。
LPOとABテストでCVRと定着率を向上
SaaSビジネスの成功は、Webサイト上のデータ分析と改善サイクルに大きく依存します。特にLPOとABテストは、新規獲得の効率化と、顧客の初期定着という二つの側面で非常に重要な役割を果たします。
新規顧客獲得においては、無料プランや無料トライアルの申し込みLPでABテストを実施します。例えば、料金プランを隠さずに提示するパターンと、機能メリットだけを強調するパターンを比較し、最も多くの優良リードを獲得できるLPを特定します。
さらに、SaaSの特性上、顧客が製品を使い始める際のオンボーディングプロセスも、Webサイト上の導線や画面設計が中心となります。顧客が初期設定で挫折しないよう、オンボーディングの各画面をLPOの視点で見直し、ユーザーが次のステップへ進むためのボタンの配置やヒントの表示方法をABテストで検証します。これにより、初期チャーン（早期解約）を防ぎ、顧客の定着率を確実に引き上げることが可能となります。
Q＆A
Q1. IaaSやPaaSとSaaSは何が違いますか？
SaaSは、完成されたソフトウェアそのものをインターネット経由で利用する形態です。IaaS（インフラ）やPaaS（プラットフォーム）は、ソフトウェアを開発・実行するための環境を提供するもので、利用者が自分でOSやアプリケーションを構築する必要があります。
Q2. SaaSの代表的な収益モデルを教えてください。
最も一般的なのはサブスクリプションモデルで、月額または年額の利用料を徴収します。利用規模に応じて料金が変わる従量課金制や、基本機能は無料のフリーミアムモデルなども広く使われています。
Q3. SaaS企業にとって最も重要な指標は何ですか？
LTV（顧客生涯価値）とCAC（顧客獲得コスト）です。特に、LTVがCACを上回る構造になっているか、そしてチャーンレート（解約率）が低く抑えられているかが重要視されます。
Q4. BtoCのアプリもSaaSに含まれますか？
はい、含まれます。例えば、月額課金制のストリーミングサービスや、クラウド同期型の家計簿アプリなども、ソフトウェアをサービスとして提供しているため、SaaSの一種と見なされます。
Q5. SaaS導入の主なメリットは何ですか？
利用者側にとっては、初期費用が安く、導入が迅速で、常に最新の機能を使える点です。企業側にとっては、継続的な安定収益が得られやすく、顧客の利用データを基に迅速に製品改善ができる点です。
関連用語
コンバージョン率（CVR）