リターゲティングとは
リターゲティングとは、一度企業のWebサイトを訪れたことがあるユーザーに対し、別のWebサイトやSNSなどを閲覧している際に、再度同じ企業の広告を表示させる手法です。ユーザーのブラウザに保存されたCookie(クッキー)を利用して、過去の訪問履歴を追跡し、興味関心に基づいた広告を再配信することから、追跡型広告とも呼ばれます。この手法は、既に商品やサービスに興味を持っているユーザーをターゲットにするため、新規顧客獲得のための広告よりも高いコンバージョン率(CVR)と費用対効果(ROI)が期待できます。
購買意欲の高い「見込み客」を逃さないための仕組み
Webサイトを訪問するユーザーのほとんどは、その場で商品を購入したり、サービスに申し込んだりすることなく離脱してしまいます。彼らは「ちょっと見てみただけ」「他社と比較したい」といった理由で、まだ購買の意思決定に至っていない状態にあるからです。この一度興味を示したものの、最終的な行動に至らなかったユーザーを「見込み客」として再度アプローチするのが、リターゲティングの最大の目的です。
BtoCのECサイトでカートに商品を入れたまま離脱したユーザーに、その商品に関連した広告を繰り返し表示させることは、購入を促す「後押し」になります。また、BtoBの企業サイトで特定の資料請求ページを閲覧したユーザーに対し、その資料の具体的なメリットを訴求する広告を配信すれば、再度サイトを訪れてコンバージョンに至る可能性が高まるでしょう。既に自社の商材に接点を持った層に絞って広告費を投じるため、非常に効率的なマーケティング施策として位置づけられています。
セグメントを分けて行うパーソナライズ戦略
リターゲティングの効果を最大化するためには、Webサイトを訪れたすべてのユーザーに一律の広告を見せるのではなく、訪問履歴に応じてユーザーを細かく分類し(セグメント化)、それぞれの層に合わせた広告を配信することが重要です。このパーソナライズ戦略が、コンバージョン率を大きく左右します。
たとえば、BtoCの総合ECサイトの場合、「特定の商品ページを見た人」「カートに商品を入れた人」「過去に購入履歴がある人」など、ユーザーを複数のセグメントに分けます。「カート放棄ユーザー」には「あと一歩」を促す割引クーポンを添えた広告を、「過去の購入者」には前回購入した商品と関連性の高い新商品を提案する広告を配信すると効果的です。特に大手企業は、保有する豊富な顧客データを利用して、このセグメントを非常に細かく設定し、最適な広告を配信することで、ROIを高めています。
プライバシー保護とCookie規制への対応
リターゲティングはCookie(クッキー)に大きく依存しているため、近年厳しくなっているプライバシー保護の規制や、主要ブラウザによるサードパーティCookieの利用制限(トラッキング防止機能)によって、その実施には課題も生じています。
マーケターは、今後リターゲティングの精度が低下する可能性を考慮し、新たな対策を講じる必要があります。その一つが、ファーストパーティCookieやサーバーサイドの技術を活用した計測方法への移行です。また、広告だけに頼らず、メールマガジンやSNSなど、顧客と直接コミュニケーションを取れるチャネル(オウンドメディア)への誘導を強化し、Cookie規制の影響を受けにくいマーケティング基盤を構築することも、ベンチャー企業から大手企業までが取り組むべき重要な戦略になっています。
Q&A
Q1. リターゲティングとリマーケティングの違いは何ですか?
リターゲティングとリマーケティングは、基本的に同じ「追跡型広告」の手法を指します。以前は、Googleが提供するサービスを「リマーケティング」、それ以外の広告配信事業者が提供するサービスを「リターゲティング」と区別することが一般的でしたが、現在ではほぼ同義語として扱われることが多くなっています。
Q2. なぜリターゲティングは通常の広告よりCVRが高いのですか?
通常の広告は、まだ商品やサービスを知らない不特定多数のユーザーを対象にしていますが、リターゲティングは「一度サイトを訪れて既に興味を示したユーザー」を対象にします。そのため、商品に対する認知や興味の度合いが非常に高く、広告がコンバージョンにつながりやすい性質を持っているからです。
Q3. カートに商品を入れたまま離脱したユーザーへの広告は有効ですか?
はい、非常に有効です。このユーザー層は「購入直前の見込み客」であり、購入意欲が極めて高い状態にあります。カート放棄ユーザーに、例えば「送料無料」や「期間限定の割引」といった特典を訴求する広告を配信することで、離脱の理由を取り除き、購入を完了させる可能性を大きく高めることができます。
Q4. サイトを訪問してから何日後まで広告を表示すべきですか?
広告の表示期間(Cookieの有効期限)は、商材の特性によって変える必要があります。即決されやすい低単価なBtoC商材であれば数日から数週間、高額なBtoB商材や検討期間が長い商材であれば、数ヶ月から半年に設定することがあります。期間が長すぎると「しつこい」と感じられる可能性があるため、費用対効果を見ながら適切な期間を設定することが重要です。
Q5. ユーザーが不快に感じないためのリターゲティング設定はありますか?
あります。ユーザーが同じ広告を何度も見すぎないよう、一日に広告を表示する回数(フリークエンシーキャップ)を制限することが非常に重要です。また、既に商品を購入したり、サービスに登録したりしたユーザーには広告を表示させないよう、コンバージョン済みのユーザーを配信対象から除外設定することも、不快感を防ぐために必須の対策です。
関連用語
コンバージョン率(CVR)