OKRとは
OKRとは、Objectives and Key Results(目標と主要な結果)の略で、企業やチーム、個人が達成したい野心的な目標(O:Objective)と、その目標の達成度を測る具体的な指標(KR:Key Results)をセットで設定する目標管理フレームワークです。単なるノルマではなく、チャレンジングで、組織全体の方向性を一致させることに主眼が置かれます。GoogleやIntelなど、成長著しい企業で広く採用されたことで知られています。
OKRが組織の集中力と連携を高める仕組み
OKRが多くの成長企業で採用される理由は、組織の集中力と連携を飛躍的に高める仕組みにあるからです。Objectives(目標)は定性的でモチベーションを高める表現にし、Key Results(主要な結果)は定量的で計測可能な指標を設定します。目標は、会社全体から部署、そして個人へと「縦」に連携・連鎖させて設定するのが特徴です。
例えば、会社のOが「業界ナンバーワンの顧客体験を提供する」であれば、マーケティング部門のOは「顧客が最も信頼する情報源になる」といった具体的なものになります。そして、そのKRとして「主要キーワードのSEO順位で5位以内を30個獲得する」「ブログ記事のエンゲージメント率を20%にする」といった数値目標が設定されます。この連鎖により、大企業でもベンチャーでも、全社員が会社の最終目標にどう貢献しているかを理解し、部門を超えた連携が促進されます。
マーケティングにおけるOKRと野心的な目標設定
マーケティング活動においてOKRを導入する最大のメリットは、現状維持ではなく、野心的でストレッチの効いた目標を設定できる点にあります。従来の目標管理が「達成できること」を前提とするのに対し、OKRは「100%達成は難しいが、60%から70%の達成でも成功とみなす」という前提で、高い目標にチャレンジすることを推奨します。
BtoCのマーケターが「リード獲得コスト(CPA)を既存の半分にする」というOを設定し、そのKRとして「WebサイトのCVRを3倍にする」という数値を置いたとしましょう。これは非常に困難な目標ですが、この目標があることで、従来の広告運用やLPOの手法にとらわれず、思い切ったWebサイトの改修やABテストといったブレークスルーを生む施策を実行する動機付けになります。OKRは、マーケティングチームに高いレベルでの創意工夫と実行力をもたらすのです。
OKRがLPOやABテストの優先順位を明確にする
OKRは、Webサイトの改善施策であるLPOやABテストを行う際の、「優先順位」と「影響度」を明確にするためのフレームワークとしても有効です。Key Results(KR)が具体的な数値目標であるため、どのKRに最も大きな影響を与える施策から優先的に実施すべきかが一目瞭然になります。
例えば、KRが「新規リード獲得数を30%増加させる」である場合、マーケティングチームは「リード獲得に直結するランディングページ(LPO)のフォーム改善」や「CVRに大きな影響を与えるABテスト」にリソースを集中させます。一方で、直接的なリード獲得に結びつきにくいWebデザインの細かな修正などは、優先度が下がります。OKRを設定することで、リソースを最もインパクトの大きい改善点に集中させ、施策のスピードと成果を最大化できるのです。
Q&A
Q1. OKRとKPI、KGIの違いを教えてください。
KGIは企業の「最終的なゴール」を指し、KPIはKGIを達成するための「途中経過の指標」を指します。一方、OKRは、KGIのような最終目標だけでなく、部門や個人の「野心的な目標(O)」とそれを測る「主要な結果(KR)」をセットで管理するフレームワークです。KGIは企業の目標管理全体、OKRは主に目標達成への動機付けと連鎖に重点が置かれます。
Q2. OKRの「O(目標)」は、どのように設定すれば良いですか?
O(目標)は、定性的で、社員がワクワクするような挑戦的な内容に設定するのが理想です。数値目標ではなく、「何を成し遂げたいか」を明確にする表現を用います。例えば、「最高のカスタマーサポートを提供する」のように、達成に向けてチームがモチベーション高く取り組める表現にすることが重要です。
Q3. OKRの「KR(主要な結果)」は、何を意識して設定すべきですか?
KRは、Oの達成度を測るための具体的な数値指標であり、Objective(目標)に対して3~5個程度設定することが一般的です。重要なのは、計測可能であること、そして達成が困難な挑戦的な数値であることです。マーケティングでは、「CVRをX%まで改善する」「離脱率をY%削減する」などがKRとなります。
Q4. OKRはどれくらいの頻度で見直すのが適切ですか?
OKRは、一般的に四半期(3ヶ月)ごとに見直すサイクルが推奨されています。KGIのような年間の目標と異なり、短いサイクルでOとKRを設定・評価することで、変化の速いビジネス環境に柔軟に対応し、目標達成に向けた行動を素早く修正できます。
Q5. OKRの達成率が低い場合、評価はどうなりますか?
OKRは、達成率が100%になることを前提としていません。むしろ、100%達成できた場合は、目標設定が低すぎた、つまり「ストレッチ」が足りなかったとみなされることもあります。一般的には60%〜70%の達成で成功と評価され、未達成であっても、そのプロセスや学んだことが次につながれば失敗とみなされないのが特徴です。
関連用語
コンバージョン率(CVR)