NPSとは
NPSとは、Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)の略で、顧客ロイヤルティ(顧客が企業やブランドに抱く信頼や愛着)を測るための指標です。具体的には、「あなたはこの製品やサービスを友人や同僚に勧める可能性が、0点から10点の間でどれくらいありますか?」という質問への回答を基に算出されます。顧客を「推奨者(9~10点)」「中立者(7~8点)」「批判者(0~6点)」の3つに分類し、「推奨者の割合」から「批判者の割合」を引いた数値がスコアとなります。このスコアは、企業の収益性や継続的な成長との相関が高いことが特徴です。
NPSはLTV最大化に貢献
従来の顧客満足度調査(CS)が「現在の満足」を測るのに対し、NPSは「将来の行動(推奨)」、つまり顧客の愛着度や口コミ意向を測る指標として注目されています。特にサブスクリプション型のサービスやBtoBの継続取引において、顧客ロイヤルティはLTV(顧客生涯価値)に直結するため、NPSの改善は企業の重要な経営戦略の一つです。
例えば、BtoCのベンチャー企業が提供するサービスで、NPSの推奨者が多い場合、彼らは無料で友人やSNSに口コミを広げてくれる「紹介者」となります。一方で、批判者が多い場合は、解約や悪い口コミによるブランド毀損のリスクが高まります。大手企業でも、NPS調査を通じて、どの支店、どの製品、どの顧客層が推奨者なのか、あるいは批判者なのかを特定することで、リソースを投下すべき改善点や、推奨者に焦点を当てたマーケティング施策を明確にできます。NPSは、単なる数値ではなく、LTV最大化に向けた具体的なアクションを導く羅針盤なのです。
マーケティング施策の評価軸をロイヤルティへ変える
マーケティング担当者にとって、NPSは短期的なコンバージョン率(CVR)だけでなく、施策が顧客ロイヤルティにどう影響するかを評価する新たな軸を提供します。特にWebサイトやランディングページ(LP)の改善において、この視点は重要です。
例えば、LPO施策で極端に煽るような広告コピーや誇大な表現を使ったところ、一時的にCVRは向上したものの、その流入顧客層のNPSが極めて低かったとします。これは、短期的な売上は上がっても、長期的な顧客離反やブランドイメージの悪化を招く危険性を示しています。そこで、NPSをKPIとして導入することで、「単に購入させるだけでなく、その後も長く使い続けてくれる顧客を獲得する」という、より健全なマーケティング目標を設定できます。LPOやABテストの勝敗判断を、CVRだけでなくNPSの変化も加味して行うことで、企業の持続的成長に貢献する施策選択が可能になります。
NPS改善のためのWebサイトのLPOとABテスト活用
NPS改善に向けた活動は、単に製品やサービス品質を高めるだけでなく、顧客との最初の接点であるWebサイトの体験向上から始まります。LPOやABテストは、Webサイトの顧客体験(CX)を最適化し、NPSの向上を支援する強力な手段です。
批判者や中立者が抱える不満の要因をNPSのフリーコメントから特定し、その要因を解決するコンテンツをWebサイトに盛り込むのが基本的なアプローチです。例えば、「サポート体制が分かりにくい」という批判者のコメントが多ければ、サポートページへの導線をABテストで改善したり、ランディングページ(LP)に手厚いサポート体制を強調したコンテンツ(LPO)を追加したりします。この改善によって、新規顧客の不安を払拭し、購入前の期待値を適切に設定できます。期待値通りの満足が得られれば、批判者になることを防ぎ、NPSの向上に貢献します。つまり、LPOとABテストは、NPS改善という経営課題を、Web施策という実行可能なレベルに落とし込むツールとして機能します。
Q&A
Q1. NPSのスコアは、具体的にどうやって算出するのですか?
NPSは、「推奨者(9点・10点)の割合(%)」から「批判者(0点~6点)の割合(%)」を引いて算出します。例えば、推奨者が30%、批判者が40%の場合、NPSは30% – 40%で「-10」となります。スコアはマイナスになることもあります。
Q2. NPSの「良いスコア」の基準はありますか?
業種や国、地域によって平均値が異なるため、一律の基準はありません。重要なのは、絶対値の高さよりも、競合他社と比較して高いかどうか(相対評価)と、自社のスコアが継続的に改善しているかどうか(時系列評価)です。多くの日本企業ではスコアがマイナスになることが多いですが、改善の傾向を見ることが重要です。
Q3. NPS調査は、いつのタイミングで実施するのが効果的ですか?
顧客との接点において、重要な体験直後に実施するのが最も効果的です。例えば、製品を購入・導入直後、カスタマーサポートを受けた直後、または契約更新のタイミングなどが適しています。これにより、特定の体験がNPSに与える影響を正確に測定できます。
Q4. NPSが低いと、マーケティングの観点からどんな問題がありますか?
NPSが低いと、顧客による自然な口コミや紹介が発生しにくくなるため、新規顧客獲得のコスト(CPA)が高くなります。また、批判者によるネガティブな口コミが広がるリスクがあり、結果としてブランドイメージの毀損や、LTVの低下につながります。
Q5. LPOを実施する際、NPSのデータはどのように活用できますか?
NPSの調査で得られた「批判者」や「中立者」のフリーコメントは、ユーザーが抱える真の不満や不安を特定する貴重な情報源です。例えば、「価格体系が複雑で不安」という意見が多ければ、LPで価格説明をシンプルにし、保証を強調するといったLPOの改善仮説を立てられます。