アーンドメディアとは
アーンドメディアとは、企業やブランドの評判や信用、共感が基になって、第三者によって発信されるメディアを指す言葉です。「Earned Media」とも表記され、直訳すると「獲得したメディア」という意味になります。これは、企業が費用を払うペイドメディアや、自社が所有するオウンドメディアとは異なり、顧客の口コミ、SNSでのシェア、ブログの記事、ニュースサイトや雑誌による報道など、第三者からの客観的な評価や言及によって成り立っています。最大の特長は、企業からの宣伝ではないため、高い信頼性と拡散力を持つ点にあります。
信頼と共感が生み出すアーンドメディアの圧倒的な影響力
アーンドメディアが現代のマーケティングにおいて極めて重要視される理由は、その情報が顧客にとって「信用できる情報」であると認識されやすい点にあります。人は、企業が自ら発信する広告(ペイドメディア)よりも、友人や知人、信頼できる第三者からの口コミやレビューを信じる傾向があるからです。
BtoCの商品レビューサイトでの高評価や、BtoBの業界リーダーによるSNSでの言及などは、新規顧客の購買決定に強い影響を与えます。特にWebが主な情報源となった現代では、ユーザーが発信する正直なレビューや評判は、企業のWebサイトや広告よりも説得力を持つことが多くあります。大手企業がカスタマーサクセスに力を入れ、顧客満足度を上げる取り組みを行うのは、このアーンドメディアによる好意的な評判を意識しているからです。逆に、ベンチャー企業が質の高い製品やサービスを提供し、顧客からの熱狂的な口コミ(アーンドメディア)を意図的に作り出すことで、大規模な広告予算がなくても、急速にブランドを成長させることも可能になります。
SNS時代におけるアーンドメディアの進化とリスク
ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の普及は、アーンドメディアの概念と影響力を劇的に変化させました。以前は雑誌や新聞のパブリシティ(広報活動)が主流でしたが、今やSNSの「いいね」や「シェア」、個人のブログなどが、数時間で数百万人に情報を拡散させる力を持っています。
SNSは、顧客が自社の製品やサービスに対する感情をリアルタイムで表現し、それが瞬時に広がるプラットフォームです。これにより、企業は顧客との関係性を常に意識し、彼らがシェアしたくなるような「価値ある体験」を提供し続ける必要が出てきました。一方で、アーンドメディアは企業が直接コントロールできない性質を持っているため、「炎上」などのネガティブな評判も急速に拡散するリスクを伴います。そのため、企業はSNS上の顧客の声を常にモニタリングし、危機管理体制を整えることが、アーンドメディア戦略を成功させるための必須条件となります。
トリプルメディア戦略におけるアーンドメディアの立ち位置
アーンドメディアは、オウンドメディア、ペイドメディアと連携することで、その効果を最大化します。トリプルメディア戦略において、アーンドメディアは、企業の評判と信頼を築く「資産」として機能します。
ペイドメディア(広告)で顧客をWebサイト(オウンドメディア)に誘導した後、オウンドメディアで提供される質の高いコンテンツやサービスが顧客に感動を与えれば、顧客はSNSなどで自発的に情報を発信します。これがアーンドメディアとなります。この好意的な評判や口コミは、次に広告を見た潜在顧客の信頼性を高め、広告効果(CPAやCVR)を改善する好循環を生み出します。つまり、ペイドメディアが集客の「量」を、オウンドメディアが情報の「質」を担保し、アーンドメディアが「信頼性」と「拡散力」を担保するという、三位一体の連携が、現代の成長戦略の基本構造となります。
Q&A
Q1. アーンドメディアの具体的な例には何がありますか?
具体的な例としては、顧客のSNSへの投稿やシェア、製品レビューサイトへの評価、個人のブログ記事、ニュースサイトやテレビ番組での報道、インフルエンサーによる紹介などが挙げられます。企業が直接費用を払っていない、第三者による言及全般が該当します。
Q2. アーンドメディアの最大のメリットは何ですか?
最大のメリットは、情報の「信頼性」が非常に高いことです。第三者による言及であるため、顧客からの信頼を得やすく、費用をかけずに情報を拡散できる「拡散力」と「費用対効果の高さ」も大きなメリットとなります。
Q3. アーンドメディアを意図的に増やすことは可能ですか?
直接費用を払って「買う」ことはできませんが、間接的に増やす努力は可能です。顧客がシェアしたくなるような「質の高い体験」や「感動的なサービス」を提供すること、SNS上で積極的に顧客とコミュニケーションを取ること、プレスリリースなどでメディアとの良好な関係を築く広報活動などが有効です。
Q4. BtoBビジネスでアーンドメディアはどのように役立ちますか?
BtoBでも重要です。顧客の声である「導入事例」や「お客様インタビュー」は、Webサイト上で最も信頼性の高いコンテンツになります。また、業界の専門家やインフルエンサーによる自社製品への言及は、見込み客の意思決定を後押しする強い根拠となります。
Q5. アーンドメディアのネガティブな影響(炎上など)を避けるには?
最も重要なのは、サービスの質を維持することと、顧客の声を常時モニタリングすることです。SNSなどを通じたネガティブな意見に対しては、放置せずに迅速かつ誠実に対応し、謝罪や問題解決への姿勢を示すことが、火種を大きくしないための危機管理策となります。