リテンション

    リテンションとは

    リテンション(Retention)とは、「維持」や「保持」を意味する言葉で、マーケティング分野では特に「既存顧客との関係を継続させ、離脱を防ぐこと」を指します。顧客が商品やサービスを継続的に利用してくれる状態、すなわち「顧客維持」の活動全般を指すことが多いです。このリテンションを高めることは、新規顧客を獲得するコスト(CPA)が上昇し続ける現代において、事業の収益安定と成長のために最も重要な戦略の一つとして位置づけられています。リテンションに成功すると、顧客生涯価値(LTV)が向上し、安定した収益基盤を築くことができます。

    企業の安定成長に欠かせないリテンションの重要性

    企業が成長するためには新規顧客獲得が不可欠ですが、既に獲得した顧客を失わないリテンション活動の重要性は、それ以上に高まっています。なぜなら、「1:5の法則」にもあるように、新しい顧客を獲得するためのコストは、既存顧客を維持するためのコストの約5倍かかると言われているからです。

    特にサブスクリプション型(継続課金)のビジネスモデルを展開するBtoBのSaaS企業や、会員制のBtoCサービスにとって、リテンションは文字通り事業の存続に関わる問題です。毎月の解約率(チャーンレート)が高ければ、いくら新規顧客を獲得しても売上が積み上がりません。大手企業もベンチャー企業も、顧客がサービスを使い続けることで得られる価値を最大化し、顧客満足度(CS)を高める施策に注力することで、リテンション率の向上を図っています。

    顧客の離脱を防ぐためのパーソナライズ戦略

    リテンションを高めるためには、顧客一人ひとりが「自分は大切にされている」と感じるような、パーソナライズされた体験を提供することが鍵となります。単なる一斉メール配信ではなく、顧客の利用状況や購買履歴に基づいたきめ細やかなアプローチが求められるのです。

    具体的なリテンション戦略として、BtoCのECサイトでは、過去の購入商品や閲覧履歴に基づき、「あなたにおすすめ」といった形で関連性の高い新商品情報をメールで送る施策があります。また、BtoBのサービスでは、ツールの利用頻度が下がった顧客に対して、使い方をサポートするウェビナーの招待や、活用のヒントを個別メッセージで送るオンボーディングやカスタマーサクセスの施策が有効です。顧客データやアクセス解析を深く掘り下げて、顧客が離脱する前の兆候を掴み、先回りして課題を解決するサポートが、リテンション率の向上に直結します。

    成功を測るための指標とデータ分析の活用

    リテンション活動の成功を測るためには、いくつかの重要な指標を継続的に追跡することが必要です。最も基本的な指標は「リテンション率」ですが、その裏返しである「チャーンレート(解約率)」も厳しくチェックすべき指標です。

    その他にも、サービスへの愛着度を測る「NPS(ネットプロモータースコア)」、そして顧客が自社にもたらす利益の総計を示す「LTV(顧客生涯価値)」などが、リテンションの成功を示す重要な指標となります。マーケターは、アクセス解析ツールやCRMデータを活用して、顧客の行動パターン(例:Webサイトへの訪問頻度、ログイン頻度、特定機能の利用状況)を分析し、リテンション率が高まる要因と、逆に離脱につながる要因を特定します。このデータを基に、サービスの改善やコミュニケーション施策の最適化を繰り返すことが、リテンション戦略の核となるのです。

    Q&A

    Q1. リテンション率の一般的な計算方法を教えてください。

    リテンション率は、「期間末の顧客数 ÷ 期間開始時の顧客数 × 100」というシンプルな計算式で算出されます。ただし、新規顧客を含めるか否かなど、業界や目的によって計算に用いる顧客の定義が異なる場合があるため、統一された基準で継続的に測定することが重要です。

    Q2. リテンションとロイヤルティの違いは何ですか?

    リテンションは、顧客がサービスを「継続利用している」という客観的な状態や結果を指します。一方、ロイヤルティは、顧客が企業やブランドに対して抱く「信頼や愛着」といった感情的な結びつきを指し、リテンションを高めるための土台となる概念です。

    Q3. リテンションを高めるための効果的なデジタル施策は何ですか?

    Webサイトの使いやすさ(ユーザビリティ)向上、利用状況に応じたパーソナライズされたメールやアプリ内通知の配信、顧客限定コンテンツの提供などが挙げられます。顧客が「利用を続ける理由」を、デジタル上の接点で常に提示し続けることが重要です。

    Q4. BtoBビジネスにおけるリテンション施策の特有な点は何ですか?

    BtoBでは、リテンションは主に「契約継続」を意味します。担当者レベルでの問題解決をサポートするカスタマーサクセス活動が中心となり、サービスの活用度を高めるための定期的なミーティングや、上位プランへのアップグレード提案などが重要になります。

    Q5. リテンションを意識したWebサイト設計のポイントは何ですか?

    顧客がサービスを利用する上で疑問や問題を感じた際に、すぐに解決できる導線設計が重要です。例えば、FAQやサポートチャットへのアクセスしやすさ、サービスの使い方ガイドへの誘導など、顧客がストレスなく目的を達成できるWebサイト構造にすることが求められます。

    関連用語

    LTV

    チャーンレート

    LPO

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