カスタマージャーニーマップとは
カスタマージャーニーマップとは、顧客が特定の製品やサービスを認知してから購入に至り、さらにその後も使い続ける一連のプロセス(旅)を、時間軸に沿って可視化した図のことです。顧客の行動、思考、感情を段階ごとに整理し、それぞれの接点(タッチポイント)でどのような体験をしているのかを明確にします。このマップを作成することで、企業は顧客視点での課題や不満、ニーズを具体的に把握でき、最適なマーケティング施策やWebサイトの改善ポイントを見つけ出すことが可能となります。顧客体験(CX)の向上やLPO戦略の基盤として広く活用されています。
顧客視点の欠落を防ぐロードマップ
多くの企業で、組織の都合や部門ごとの最適化が進んだ結果、顧客視点が失われがちです。カスタマージャーニーマップは、この「顧客視点の欠落」を防ぐための最も強力なツールです。顧客が商品を知り、比較検討し、購入し、そして利用するまでの全過程を、一人のペルソナ(理想的な顧客像)の感情や思考に寄り添って描くことで、自社のサービスの穴や改善すべきタッチポイントが浮き彫りになります。
例えば、BtoCの旅行予約サイトの場合、認知段階でのSNS広告、検討段階での競合サイトとの比較、予約段階でのフォーム入力の煩雑さ、そして利用後のアンケート依頼といった全ての接点における顧客の感情を追跡します。予約フォームで「不安」を感じていることが分かれば、そこが離脱ポイントだと特定でき、LPOの最優先課題となります。
BtoBのSaaSベンチャーが、このマップを使うことで、営業が接する前のWebサイトでの情報収集段階で顧客が抱える疑問を把握し、それに応えるコンテンツを充実させるといった、部門横断的な施策が可能になります。
顧客体験のボトルネックを特定し改善する設計図
カスタマージャーニーマップの真価は、顧客体験(CX)における「ボトルネック」、つまり顧客が最もストレスや不満を感じているポイントを特定する設計図となる点にあります。どの段階で「イライラ」や「不安」が高まっているのかを明確に把握できれば、そこにリソースを集中して改善することで、費用対効果の高い施策を実行できます。
具体的には、マップ上で顧客の感情が著しく低下しているポイントを見つけます。そこがWebサイトの特定のページであれば、そのランディングページ(LP)の内容やデザインが、顧客の抱える疑問や不安を解決できていない可能性が高いと判断できます。
この特定されたボトルネックに対して、アクセス解析やヒートマップで得られた定量データと、マップで可視化された定性的な感情を照合します。例えば、無料トライアル申し込み前の「製品比較ページ」で顧客の不安が高まっている場合、LPに競合優位性を明確に示す比較表や、安心感を高めるサポート体制の情報を追加するなど、具体的な改善策が導かれます。
Q&A
Q1. カスタマージャーニーマップは、どのマーケティングフェーズで最も役立ちますか?
すべてのフェーズで役立ちますが、特に「比較検討」から「購入決定」に至る間のボトルネックを発見し、Webサイトの改善やコンテンツ作成の優先順位をつける際に最も強力な効果を発揮します。
Q2. ペルソナとカスタマージャーニーマップの違いは何ですか?
ペルソナは「誰が」顧客であるかという理想的な顧客像を定義するものです。カスタマージャーニーマップは、そのペルソナが「いつ、どこで、何を考え、どう行動するか」という時間軸に沿った体験全体を可視化するものです。
Q3. マップを作成する際に、必ず含めるべき要素は何ですか?
最低限、「フェーズ(認知、検討、購入など)」、「顧客の行動(検索する、資料請求するなど)」、「思考(何に疑問を感じているか)」、「感情(ポジティブかネガティブか)」、そして「タッチポイント(Webサイト、SNS、広告など)」を含めるべきです。
Q4. BtoBとBtoCでマップ作成に違いはありますか?
あります。BtoBの場合、ジャーニーの期間が長く、関わる人物(ステークホルダー)が複数いるため、部署ごとや役割ごとのペルソナを作成し、それぞれのマップを連携させる必要があります。BtoCは比較的シンプルで、個人の感情にフォーカスします。
Q5. チームでマップを共有するメリットは何ですか?
部門間での顧客理解のズレがなくなり、全社員が「顧客体験の向上」という共通目標に向かって動けるようになります。これにより、マーケティング部門と営業部門、サポート部門が連携した一貫性のある顧客体験を提供できるようになります。
関連用語
コンバージョン率(CVR)