カゴ落ち

    カゴ落ちとは

    カゴ落ちとは、ECサイト(ネット通販)において、ユーザーが商品をショッピングカートに入れたにもかかわらず、最終的な購入手続きを完了せずにサイトから離脱してしまう現象を指します。別名でカート放棄とも呼ばれており、マーケターにとっては売上に直結する大きな課題です。ユーザーは購買意欲が高く、すでに商品を選んでいるにもかかわらず購入に至らないため、サイト側の問題が原因であることが非常に多いのです。このカゴ落ち率を下げることは、ECサイトの収益改善において極めて重要な施策になります。

    カゴ落ちを引き起こすユーザー心理と具体的な原因

    せっかく商品をカートに入れたのに、なぜユーザーは購入をやめてしまうのでしょうか。その背景には、いくつかの心理的な障壁や、サイトの使い勝手に関する問題が存在します。最も大きな原因の一つが、予想外の追加費用です。カートに入れた後で、高額な送料や手数料が加算されていることに気づくと、「思っていたより高い」と感じて購入をためらってしまうのです。

    また、購入手続きの複雑さも、カゴ落ちの主要な原因となります。たとえば、初めて利用するサイトで、会員登録や長い個人情報の入力を求められたり、決済方法の選択肢が少なすぎたりすると、ユーザーは面倒に感じて離脱してしまいます。BtoCビジネスにおける大手ECサイトの事例を見ても、決済までのステップが多いほど、途中で顧客を失うリスクが高まる傾向があります。ユーザーは、スムーズでストレスのない購買体験を求めているのです。

    カゴ落ち対策の王道:チェックアウトプロセスの最適化

    カゴ落ち対策の核となるのは、ユーザーが購入完了までの道のりをいかに快適に進めるかという点にあります。具体的には、購入プロセス(チェックアウト)の各ステップを徹底的に改善することが求められます。

    まず、送料や手数料をカートページや商品ページのできるだけ早い段階で明確に提示することが重要です。「合計金額がいくらになるのか」を常にユーザーに把握させておくことで、会計時のサプライズを防げます。次に、手続きの簡略化も必須です。具体的には、ログインなしでの「ゲスト購入」を可能にする、入力フォームを最適化して(EFO)負担を減らす、などが挙げられます。例えば、大手アパレルECのように、ソーシャルアカウントでの連携ログインを導入するのも一つの手でしょう。決済方法も多様に用意することで、幅広いユーザーのニーズに応えられるようになります。購入プロセス全体を見直し、どこにユーザーの「つまずき」ポイントがあるのかを、アクセス解析などを通じて特定していくことが大切になります。

    離脱後のリカバリー戦略としてのリターゲティング

    カゴ落ちの対策は、サイト内部の改善だけでは不十分です。一度離脱してしまったユーザーをサイトに呼び戻すための「リカバリー戦略」も重要になってきます。その代表的な手法が、リターゲティング広告の活用です。

    リターゲティング広告は、カートに商品を入れたまま離脱したユーザーに対し、その商品や関連商品の広告を、別のWebサイトやSNS上で表示させる手法です。ユーザーが「後で買おうと思っていたけど忘れていた」という状態だった場合、この広告が購入を思い出させるきっかけになります。さらに一歩踏み込んで、カゴ落ちした特定の商品に対して「今だけ送料無料」「10%オフクーポン」といったインセンティブを付加したメールを送る手法も非常に有効です。特にBtoCのマーケターにとって、このリターゲティング施策は、既に購買意欲が高い層にアプローチできるため、高い費用対効果が見込める重要な手段となっています。

    Q&A

    Q1. カゴ落ちとフォーム落ちの違いは何ですか?

    カゴ落ちはECサイト特有の用語で、商品をショッピングカートに入れた後の購入手続き途中で離脱することを指します。一方、フォーム落ちは、資料請求や問い合わせなど、一般的なWebサイトの「入力フォーム」で、情報を入力している途中で離脱することを指し、ECサイトの購入手続きの途中で離脱することも広義のフォーム落ちに含めることができます。カゴ落ちは、売上に直結する顧客を逃している点で、特に深刻な問題として捉えられます。

    Q2. カゴ落ち率の一般的な目安はどのくらいですか?

    カゴ落ち率は業界や国によって異なりますが、一般的なECサイトでは平均して60%から80%程度と言われています。これは、多くのユーザーが一度カートに商品を入れても、価格比較や検討のために離脱していることを示しています。そのため、カゴ落ち率が高いからといってすぐに悲観する必要はなく、この数値をいかに下げられるかに改善の余地があると考えられます。

    Q3. カゴ落ちを防ぐために「あと払い」などの決済方法を増やすのは有効ですか?

    非常に有効です。特にクレジットカードを持っていない、あるいは利用に抵抗があるユーザー層にとって、「あと払い」や代金引換、コンビニ決済などの多様な決済手段の提供は、購入障壁を下げる大きな要因になります。ユーザーが普段利用している決済手段がないために購入を諦めるケースは多いため、決済の選択肢を増やすことはカゴ落ち対策の基本の一つです。

    Q4. BtoBのECサイトでもカゴ落ち対策は必要ですか?

    はい、必要です。BtoBのECサイトでは、個人ではなく企業として購入するため、決済手段の多様性(請求書払いなど)、見積もり機能の有無、購入の承認プロセスなどがカゴ落ちの原因になることがあります。BtoCとは異なる視点での、企業取引ならではの障壁を取り除くための対策が求められます。

    Q5. カゴ落ち対策として、ユーザーレビューはどのように役立ちますか?

    ユーザーレビューは、購入手続きの直前で不安を感じているユーザーに対し、商品の品質やサイトの信頼性を裏付ける重要な安心材料になります。カートページやチェックアウトプロセス周辺で、商品の評価や実際の購入者の声を見せることで、「買って大丈夫だろうか」という迷いを払拭し、購入完了を後押しする効果が期待できます。

    関連用語

    コンバージョン

    コンバージョン率(CVR)

    LPO

    ランディングページ

    ABテスト

    リターゲティング

    UX

    ヒートマップ

    顧客単価